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2月21日「県民健康調査から・・見る福島」と題して種市先生をお迎えしワークショップを開催しました。

 

まずは参加頂いた皆さんの要望から「新型コロナウイルス」について医師の立場としてお話をして頂きました。
予防・防護についてはインフルエンザ・ノロウィルスの対策を合わせて行う事、マスクの効果は防御という意味では限界があるという事など。今回の新型コロナウィルスに対しては、ワクチン・新薬の開発が出来てない事、国内での感染状況が明らかにされてこない事で不安が広がっています。検査をしないことで見かけ上の感染者を少なく見せる方法は、原発事故後の甲状腺検査の手法に通じるものがあり、感染状況の正確な情報が出されてない点では今回のワークショップの内容に繋がるものです。

2011年10月から開始された「県民健康調査甲状腺検査」も、5巡目の検査がこの4月より開始される予定です。以下がこれまで行われた、「県民健康調査甲状腺検査」における検査結果を集計したものです。

 

前回検査でA1、A2のう胞という結果は、前回(検査2年前)の状態でがんの芽すらなかったということになります。本格検査1(2巡目)の結果を見ると、前回A1・A2のう胞が58名もいて全体の82%に相当します。もともと検査を開始した頃「検討委員会」では、甲状腺癌は成長の遅いがんであると説明されており、甲状腺がんが10mmに成長するためには30ヶ月かかるという報告もあります。
この結果を見ると、約2年の間に手術を要すような甲状腺がんが発見されています。今まで考えられていた甲状腺がんの成長速度をはるかに上回ったものですが、このことに関して「検討委員会」の中で話し合われたことはないと思われます。記者会見で質問されたことはあったと思いますが、それが問題視されマスメディアで報道された事はなかったと思います。

集計外の症例というものも報告されていますが、この12例は検査の枠から外れて発見されたもの全てではなく、「検討委員会」で未報告の症例の中で福島県立医大付属病院で手術した症例だけに限られています。福島県立医大付属病院で治療にあたっている、鈴木眞一医師が他の施設で手術した症例や、東京の病院など他施設での手術症例は含まれていません。先日、「子ども脱被ばく裁判」の証人として出廷した鈴木眞一医師は、会津若松市やいわき市の医療機関で手術していたことを証言しましたが、その手術症例数は明確に回答しなかったとのことです。また、金地病院の清水一雄医師や会津中央病院の旭修二医師からは、それぞれ1例の集計外症例を報告されていますが、それらもこの12症例には含まれていません。

これらの集計外症例の把握のために「甲状腺検査評価部会」部会長の鈴木元氏は、がん登録を活用していくと回答しています。しかし、がん登録は手術後の確定診断が出なければ登録されないシステムであり、いわゆる「悪性疑い」症例の把握は不可能です。また、がん登録の患者さんの所在に関しては現住所が登録先となるため、県外に就職している場合等は報告漏れとなることになります。
すでに「甲状腺検査本格検査結果に対する部会まとめ」が示されていますが、「現時点において、甲状腺検査本格検査(検査2回目)に発見された甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない。」とされています。しかし、症例をしっかりと把握していないのに、このような結論を出して良いものでしょうか?

鈴木元部会長は県民健康調査の枠を超えて、診療情報の個人情報を収集するのは困難と言っていますが、それほど難しいものとは思えません。なぜなら、症例の地域別発生数や治療方法などの全国集計は、学会主導で行うことは可能だからです。実際に整形外科学会では「大腿骨頸部骨折」という、整形外科的にはとても多い骨折の集計を学会主導で行っています。甲状腺がんの手術をしている施設は、整形外科の骨折を手術している施設に比べたら、比較にならないくらい少ないために、学会が音頭を取れば簡単に集計外症例を把握することは可能と考えられます。できる可能性があることをやらないという事は、そのつもりはなくとも何らかの隠したいものがあると疑われても仕方ないと思います。

また、もともとの検査の枠組みを考えたのは、チェルノブイリの調査に入った医師たちが主導したものと思われます。チェルノブイリの調査では、当初検査対象数と甲状腺がん発症数の正確な把握ができていなかったと報告されています。チェルノブイリの調査に入った経験があれば、本来しっかりと症例数を把握することの重要性は理解していたはずです。

現在、「検討委員会」「甲状腺検査評価部会」での最近の議論の方向性は、「甲状腺検査の害」を強調し検査縮小に持って行こうとしています。承諾書を提出した上で行われている学校検査を、強制性があるからやめるべきであるとも言っています。しかし、本来は検査を繰り返し行うことにより、A2結節症例を経過観察していくという考えのもとに、A2症例は2次検査(精密検査)の対象にしないと決めて開始された検査です。検査縮小を議論するのであれば、まずはA2結節症例の対処を検討しなければならないはずですが、そのことは全く議論されていません。このことは、新たな健康被害を生み出す原因になる可能性もあります。

「県民健康調査検討委員会」「甲状腺検査評価部会」の委員の方々には、放射線の影響があるかないかの議論の前に、子どもたちの健康のため手術症例の傾向をしっかりと検討し、今後の方向性を議論していただきたいと思います。また、外部で再検証ができるように、個人情報をマスクした状態で、できる限りの情報公開をお願いしたいと思います。

 

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原発事故後、種市医師は整形外科診療を行いつつ、甲状腺超音波検査者資格取得し子供達を中心として甲状腺検査を行ってきています。
医師としての当たり前の事をする。
積み上げてきた資料から見えてきた事、参加者へ質疑を交えながら説明頂きました。
正確な情報が開示されない状況では小児甲状腺がんが原発事故の影響であるかと言う論点が成り立たない
なぜ情報開示しないのか?
今後も県民健康調査に関しては意識をもってみていきたいと思います。

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